イオン輸送と化学結合

イオンが物質内を移動できることを利用するデバイス(燃料電池、電気化学センサー等)において、イオンが移動する際にどのような結合の解裂/再結合が発生しているのだろうか。共同研究者の笠松秀輔氏(当時 東大院マテリアル工学 修士1年)は、イオン伝導体であるジルコニアの第一原理計算から、酸素空孔の荷電状態の違いにより、イオン結合ネットワーク中に共有結合が局所的に発生する可能性とそのメカニズムを明らかにし、イオンがその共有結合部を通過する際には共有結合の切断を伴うためイオン移動障壁が大きくなってしまうこと明らかにした。

参考となる文献(学術論文リスト):29,35,52,56,57,68,69,70,74,79,93,109

局所反応場の化学的性質:硬い/軟らかい反応場

原子レベルでの界面構造は本質的に多様なものである。それが、固体(金属)、電解質(イオン伝導体)、気体(分子)からなる三相界面になればその複雑さの程度ははかりしれない。しかし、界面構造は多様であっても、その界面機能も構造の多様さに応じて多様になるのであろうか?このような単純な疑問から三相界面に内在する化学的特徴をシンプルに分類するための新しい「場の定義」の探索を行った。右図に示すような三相界面モデルの第一原理計算を行い、界面における金属原子(Ni)の電子状態として、(右図:左)孤立原子の特徴をもつ場合、(右図:右)金属原子の特徴をもつ場合に分類できることを見出した(金属に関する化学的硬さの定義を用いると、前者が硬い反応場、後者が軟らかい反応場)。これらの界面上においてイオン移動に伴う電荷の再分配を検討したところ、硬い反応場では電荷移動反応を阻害し、軟らかい反応場では電荷移動反応を促進するということが分かった。「化学的に硬い/軟らかい局所反応場」という定義が界面の場としての機能を簡便に捉えるうえで有効であることを明らかにした。燃料電池・センサー等の電気化学デバイスにおける三相界面の反応経路解析が現在進行中である。

参考となる文献(学術論文リスト):27,31

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